居酒屋

北海道・函館。脱サラして小さなもつ焼き屋「兆治」を営む英治(高倉健)と茂子(加藤登紀子)の夫婦。しかし、平凡ながらも幸せな日々を送っていた英治の前に、かつての恋人さよ(大原麗子)が現われた。英治のことが忘れられないさよは、やがてすさんだ生活に身をゆだねていく…。
山口瞳の同名小説を監督・降旗康男、撮影・木村大作、主演・高倉健の『駅STATION』トリオで映画化。久々に等身大の庶民を演じる健さんの姿は実にさわやかで観ている側も心地よく、健さん映画に欠かせない個性派俳優たちも競って店の客として登場。またここでは映画初出演の加藤登紀子が絶品の味わいを見せている。その加藤の名曲を健さんが熱唱する主題歌『時代遅れの酒場』も、この暖かくも切なく悲しい人間ドラマにふさわしい。(増當竜也